今年も、5月8日からブナの木陰の音楽会が始まった。生憎の肌寒く小雨が煙るようなお天気だったが、アーティストのご厚意もあり、なんとかやり遂げることができたという案配。今回はギターの池田宏里さん、ピアノの相馬寛樹さん。曲目は下記。

 
F・タレガ アルハンブラの想い出
N・イエペス 禁じられた遊び
R・ディアンス タンゴ・アン・スカイ
C・コリア スペイン
G・キングス インスピレーション
   
ロドリーゴ アランフェス協奏曲から
エリック・サティ ジムノペティ1番
菅野よう子 fanelia
スコットランド民謡 グリーンスリーブス
チックコリア La fiesta
相馬寛樹 即興演奏
J・Kosma 枯葉

 実に豊かな時間を過ごすことができた。肌寒くはあったが、午後になって陽射しも降り注ぎ、なんとも言えぬ穏やかな午後の一時。毎回感じるのだが、音楽という人為は空間を一変させる。空間の属性が際立ってくるのだ。緊張と安らぎという背反するものが、まるで短調と長調が織りなすシンフォニーのように、独特の調和世界を見せてくれる。ちょっと肌寒い気温に、春もみじと呼ばれる色彩、時々姿を見せる陽射し。都会的なギターの音色に、淵に沈んでいくかのようなピアノの低音。これらが渾然一体となって、風景というか環境を包み込んでしまう。その環境の構成員たる観客としての私。実に不思議な空間ができていた。