花はさくら、桜は山桜の、葉赤くてりて、ほそきが、まばらにまじりて、花しげく咲きたるは、また、たぐふべき物もなく、うき世のものとも思われず−宣長のいうような山桜を見つけるのは極めて難しいのですが、「気分は宣長」で撮ってみました。まだ満開ではなく、三分咲きといったところでしょうか。でも、ただ今の気温は17℃。あっという間に散ってしまうのかも知れません。
 


 山桜は咲き始めたのですが、ソメイヨシノは冬の間にウソに花芽を啄まれたために弱っているのでしょうか、まだ咲く気配すらありません。こうして見ると、ウソはソメイヨシノの花芽を啄んでも、山桜は啄まないのでしょうね。

 真夏日を記録しているところから見れば、えッ、まだ桜が咲いてなかったの?でしょうけれど、今年の十和田湖は札幌よりも遙かに遅咲きになりました。でも、まぁ、これから緑が一斉に芽吹き始めます。ただ今、キタコブシやイチリンソウ、ニリンソウ、ミヤマキケマン、 ハナワサビなどの花が咲いています。間もなく、イタヤカエデの黄金に輝く花も咲くことでしょう。
 


 今度は山野草をご紹介します。これは花山葵(はなわさび)。これまでに折角の辛みを出せなかったのは 、大量の湯を掛けていたこと(煮るなどとは以ての外)。これを改めるに、塩水でザッと洗った後、ザク切りにしてひたひたになる程度の熱湯を廻し掛け、ラップをかけて氷で冷やす。これだと辛さもピリッときます。 それほどに壊れやすく、繊細な辛みなのですね。一晩以上置く場合には、密閉容器に入れて冷蔵庫に保存。さもなくば、辛みが失せてしまいます。少量のお醤油かポン酢で召し上がれ。 シャキシャキ感も格別。
 


こちらはミヤマキケマン−毒草
 


 ニリンソウ・二輪草−こちらでは「ふくべら」という名の山菜ですが、厄介なことに猛毒の代表トリカブトと同じキンポウゲ科。キクザキイチリンソウも同科で有毒。これらが同じところに、同じ時期に芽を出してきます。葉脈も似ており、慣れないと区別が付きません。で、この季節、ニリンソウと間違ってトリカブトを食べてしまう事故が起こります。 食べられるかどうかで判断するならば(昔は一大事だったことでしょう)、その花の評価にも微妙に好悪が影響してきます。が、食べることが命懸けだった時代には、その好悪こそが生活の智慧だったので はないでしょうか。
 


 ニリンソウはトリカブト等とは違ってとても愛らしく清楚な花(トリカブトは8月下旬から9月にかけて濃紫色)を付けます。茎は中空であることが特色ですから、茎を確認すれば安心して食べることが出来ます。とは言っても、味や香りは殆どなく、歯触りや初物を楽しむ程度。昨日、東京は板橋区のお客様が「区の花」と仰っていましたが、今でも板橋区には咲いているのでしょうか。
 


 ニリンソウの花を拡大。ご覧のやうに、実に愛らしく清楚な花です。トリカブトとは大いに異なりますが、美しさについて申し述ぶれば、清楚な美しさと毒のある美しさとは違ふし、 確かにそれぞれ存在するものだと言へませう。ここまで煽つておいてトリカブトの花を掲載しないといふのもなんでございますれば、ご参考までに下記。 −美しい花がある、花の美しさという様なものはない−小林秀雄
 

 
2005-08-31 八甲田山にて撮影