U 国内の先進事例

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1.別府温泉のバリアフリー観光

(1)大浴場、大広間中心の温泉地からの脱却

 大分県別府温泉は日本有数の温泉観光地である。古くから湯治場として栄え、高度成長期には団体客が大挙して訪れた。そのため、従来型の大浴場、大広間を備えた旅館ホテルが多く、近年の少人数の家族旅行や高齢者グループの旅行に対応した設備の整備はやや遅れている。そのため、96年以降、観光客は減少し続けている。業界は、観光客減少に行政以上に危機感を持って対応に立ち上がった。

 旅行のトレンドが高齢者の少人数旅行に変化していることを感じ取った旅館ホテル組合は、97年からバリアフリー観光整備に取り組むため、行政との話し合いを続けてている。観光振興は別府市全体の振興になるものであるという認識では両者一致するものの、縦割り行政の弊害か、現状ではまだうまく連携しているとはいえない。しかし福祉分野からの働きかけは活発で、業界では別府観光に対する障害者の期待の現れととらえ、独自に施設整備に取り組んでいる。

 大広間、宴会つきの団体旅行が減り、高齢の少人数旅行客が大きなマーケットを占めるようになってきたことから、別府市に働きかけて20013月、別府市バリアフリーガイドマップを作成した。さらに7月には市内のホテル・旅館のユニバーサルデザインを進めるため、ユニバーサルデザイン特別委員会(委員長甲斐賢一・ホテル風月HAMMOND社長)を発足、宿泊施設のバリアフリーの充実を図っている。高齢者対応の改装や車椅子対応改装だけでなく、料理の工夫なども含めて積極的にバリアフリー化を進めている。

 その一例として、ホテル竹の井では玄関に車椅子用リフトを設置し、トイレを車椅子で使えるよう改造した。また、床を完全フラットにして、手すりを多くつけた家族風呂を新たに作った。車椅子客の利用だけでなく、高齢者や幼児のいる家族に喜ばれている。

 

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