U 国内の先進事例

(4)ゆふいん観光行動会議

 20017月、観光体制を一新し、ゆふいん観光行動会議を創設した。これは由布院温泉観光協会と由布院温泉旅館組合のそれぞれ別の組織が、今日の由布院の課題に即応する事業執行体制の強化のために創設したものである。

 この行動会議は両方の常任理事からなる総務的機能を持つ「世話人会」と、事業を行うため自立して行動する「事業委員会」からなり、事業委員会は具体的に行動する6つの委員会に分かれている。このなかの「おもてなし委員会」がバリアフリー観光に関する事業を担当している。

 

<研究者の眼>

 歓ばれ、感謝されて成り立つ商売の姿勢とは?

大分県にある湯布院は、由布岳山麓に拡がる田園地帯の温泉である。こう言ってしまえば失礼なのだが、特段、見るべき景観もない。が、しかし、湯布院の方々が三十年に渡る努力の末、その名は世界に轟き始めている。それは徹底的に湯布院らしさに拘ること、徹底して風評を味方に付けることへの努力の結果に他ならない。不況だ、デフレだ、と喧しい現代に、一泊@30,000円−48,000円の宿泊料で、年間稼働率98%を誇っているのだ。この稼働率が意味するものは、客が希望の日に由布院 玉ノ湯に泊まろうとしてできることではないことを意味する。事実、玉ノ湯へは空室がある日を選んで予約しなければならないのだ。黒川温泉(熊本県)も同じような状況にある。どちらも地域全体がアイデンティティを定め、徹底的に拘った街づくり、人づくりの成果である。ならば、我々が目指すものの本質は眼前に現れているといって差し支えはない。我々青森県も、同じような姿勢をとり、同じレベルの努力をするのみ。我々には八甲田、奥入瀬、十和田湖、白神山地などの恵まれた自然資源や、歴史的、文化的に優れた環境や素材に溢れている。これらを再評価し、その表現を工夫すればできることに違いない。

豊かな時間を過ごすということ
豊かさとは己一人で達成できるものではない。他者との関係性のみに於いて得られるものである。即ち、他人を豊かにできぬ者は己を豊かにすることはできぬのだ。同じことが風評についても言える。先ずは他者から評価される姿勢をとること。これができずに風評を味方に付けることはできない。他者からの評価とは、自分の持っているものを惜しみなく他者に与えねば得られるものではない。同時に、そのセンスを磨くことなくして、得られるものでもない。(小笠原 雅彦)

 

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