もしも、奥入瀬渓流が歩行者天国になったなら...
1999年3月10日未明、奥入瀬渓流に土砂崩壊事故が起きました。6月26日に復旧するまでの3ヶ月以上に渡って、全面通行止めになってしまったのです。これは大変なことになったと、関係者は一様に大きなショックを受けたのものでした。私はこの状況をウェブページで
お知らせするために、撮影機材を背負って何度となく奥入瀬に足を運びました。
緑滴るブナの若葉が、ゆらりゆらりと揺れている。淡い光は漂うように、ほのかな風は戯れているかのように。
奥入瀬の水は輝き
ながら、嬉しそうにころころと流れている。土の匂いや、咲き始めた花々の香りが心地よい。耳を澄ませば、鳥や虫たちのシンフォニー。美しい、実に美し
い。そして、なんて穏やかな空間なのだろう。
久しく忘れていた安らぎなのか、懐かしさのような思いが込み上げてきました。私は撮影することも忘れ、ただ茫然と佇んでいたのでした。
さて、奥入瀬渓流の歩行者天国化と言ってもピンと来る方は、意外に少ないことがわかりました。ならば、その空間イメージを目に見える形にする必要があります。そこで私たちは『ブナの木陰の音楽会』を開催いたします。スプリング・エフェメラルと呼ばれる早春の植物が、一面に花を咲かせる頃から始めて 、晩秋の風が吹く季節まで。この青い森の中のあちこちで、音楽会を開こうというものです。考えてみれば、青森県内にはそこらじゅうに 、あづましい※空間が存在していたのです。ご一緒にそのあづましさを創り、楽しみましょう!
※あづましい:津軽弁の形容詞−穏やかで気持ちのよい様、状態。 |